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或る青の名
彼さんの書く学生ソカクロ可愛いなぁって思ってたら現実逃避三割で出来上がりました。あああああ逃げちゃ駄目だorz



‐‐‐‐‐‐‐‐‐




「クロス」




蚊の鳴くような、と喩える程ではないが、春一番の豪風に掻き消されて辛うじて聞こえるか聞こえないかの奴の、声。
開いたままの屋上へ続く錆び付いた扉が、頭上に広がる澄み渡った青空とは不釣り合いなくらいに、風に吹かれて甲高い不気味な音を立てていた。

丸められた卒業証書を握るアイツの手の指先は、赤い。
3年間を通して丁寧に扱われる事など殆どなかった筈の、紺色のブレザーは柔らかくはためき、揺れる。


抱きしめたい、と、思った。
そのつよい背中に腕を回して、その耳元におめでとうと囁いて。
そして、
アイツの隣にある居場所を誰かに譲渡してしまう悔しさと悲しさのいり混じったような感情を、はらしてしまいたかった。
ただ、その感情の正体が何であるのかが分からない俺は、中途半端な期待と覚悟で、奴にふれるのがこわかった。

ほぼ真上に昇った太陽のせいで、逆光になったコイツの表情は分からない。否、分からない方が良かったのかもしれない。

一歩、塗装の剥げたコンクリートの上を、ソカロが踏み出す。
おもむろに右腕で抱えていた大きな花束の中から、真っ赤な薔薇の花を一本、引き抜いた。




「そんな顔すんな、クロス。」


俺なんかのために泣くな、と言ったソカロの顔は、目尻から堰を切ったように溢れ出す滴に滲んだ。
気付けば奴は自分の目の前にまで近付いていて、花束を片方の手に持ち変えると、冷えた指先が頬に触れた。


「ソカロ、」



奴は笑いながら赤い薔薇の青々とした茎を折ると、丁度良い長さになったそれを俺の胸ポケットに差した。
名前を呼ぶのにも鳴咽が混じりそうになるのを堪える俺の背中には、あの腕が回って。
俺には赤い薔薇が似合うと言って、勘違いかもしれないけれど、泣きそうに、笑った。




(ああ、何故)
一緒にいたいと願うのは簡単なのに、一緒にいられないのだろう。

胸に刺さった赤い薔薇が、笑うように風に揺れる。




















泣きたくなるくらいきれいな空を見ていた。
薄いガラスを隔てて広がる、もしもそれに触れてしまったなら割れてしまいそうな、青。
冷たい錆びたフェンスの縁に手をかける。カシャン、と鉄の擦れる音がした後は、優しく吹きつける初春の風の柔らかな音しかしない。
屋上から眺める限り、生まれ育った町は何処も変わった様子は見られなかった。しかし、幼い頃の記憶に残るその姿と、今は随分違って見える。こんなにこの町を狭く感じていただろうか。あんなところに空き地が出来ていたのだろうか。こんなにも空を高く感じたことは、あったのだろうか。

変わってしまったのは他でもない自分であることに気付いたのは、何時だったかもう忘れてしまっていたけど、過去を回想する時の懐かしいような寂しさは、忘れてはいない。『卒業』という最早形骸化した行為そのものに特別な何かを重ね合わせようとは思わないが、未だ、迷いがあった。
アイツはきっと、俺がいなくなってしまっても、そう頻繁に会えなくなってしまっても、生きてゆくだろう。それは俺だろうと同じ。この町に残るという選択肢だってあった、けれど、『別離』という道を選んだ。この曖昧な関係も、曖昧な気持ちも、いつか真っ白になる時が来て、いつかアイツもこの町のように、いつか自分もこの町のように、変わってしまう日が来るだろう。いつか自分のした選択を、悔む時も来るだろう。

寂しさも後悔も受け止められる日が来るのなら、忘れないでおこう。泣きたくなるくらいの青さも、アイツの声も。


もう一度、もう一度、もう一度だけ。おまえにさよならを言う前に。





「クロス」








| 01:02 | - | comments(0) | - |
声を上げずに死す徒花
ガウゼロ……というかヤンデレゼロスが書きたかったです。
特に言うことも無いぐらいの自己満足なグダグダっぷり\(^o^)/恥ずかしい


‐‐‐‐‐‐‐‐‐



闇に呑み込まれた猜疑と嫉妬を嚥下する。僕たちを嘲笑うように耿々とひかる月の白さだけが、鋭い。
眼下を渦巻き、打ち寄せる波は、まるで僕の心の中そのもの。魔族がその他の種族と関係を結ぶ為の手段である会話も、きっと僕の告げた真実の全貌を未だ信じられずにいる今の彼とでは、きっと成り立たない。
しかしそれは当然のようでまた不思議だった。確かに僕は今までの強気で勝ち気な人間としてのある彼女の存在すべてを、可能性として否定した。自分自身の事ではないのにどうしてこんなにも、どうして?



「ガウリイさん」



彼は、力無く膝から崩れ落ちる。もう僕がどんなに近寄っても、触れようとも、反抗する様子すら見られない。
僕は彼の前に膝を折り、その屈強な体を抱き締める。僕の知らない、知るはずもなかった彼の体温が、僕を何とも言いようのない感情にさせる。
僕が、ずっと欲しかったものを手に入れた、幸福感?若しくは満足感、充実感。どれも当てはまるようで、当てはまらない。
こんなに近くにいるのに、彼の中に僕はいないのだから。

漸く絞り出されるように紡がれた言葉は、僕も良く知る彼女の名前だった。ちょうど、こんな朝焼けみたいな橙をした髪の、おろかな人間。彼がこんなになるまで愛した彼女を、僕はこれほどまでに憎んでいる。



「人間ではないかもしれない、魔王の一欠片かもしれないリナさんがそんなにも恋しいですか?」



腕の中にいる彼の肩がびくりと揺れる。生温い風が彼を追い詰めるように、吹き荒ぶ。
彼の小さな嗚咽が聞こえてきても、僕は次の言葉を考えていた。もっと、もっと、彼が悲しむ様子を見てみたい。泣かせてみたい。そんな弱りきった彼が頼るのは、闇へ吸い込まれたこの人へ手を伸ばし届かなかった彼女では、ない。


「‥‥ガウリイさん」


眩しいほど黄金色の髪を指で掻きわけて、耳元で、優しく囁く。さて、いかにも優しくて脆い人間の彼女は、どんなふうにして彼を呼んでいただろうか。そんな一瞬の迷いも打ち消すように。



「僕は、今日はじめて人間を愛しました。」



彼の瞳が、僕を映す。ぼろぼろに砕けた彼のプライドの最後の一片が、いま、灰になる。僕は心の中で、笑っていた。嬉しかったからだ。

羊水ような生温い闇の中に守られながら、生まれてきた僕たち魔族の。抗う事など出来はしない運命の中で、僕と貴方が特別で、この体もこの心もぜんぶ、繋がっている理由になるから、貴方の疑問には答えない。



「‥‥さぁ? それは、秘密です。」











♪右肩の蝶/鏡音レン
| 23:40 | - | comments(0) | - |
カウントダウン
 
宿題その1・赤♀ジン
何度まだ十八禁は読めない年齢だから書けないんだよメッって神たる官能作家に言ってもエロエロな方向路線が変えられなかったので諦めました\(^o^)/仕方ない気も……

Coccoのカウントダウンはジンもクロスもおおよその悪人(=にょたると立派な悪女)に当て嵌まる曲でびっくりです。気になる方はレッツ歌詞検索。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐




ぬらり、と、犬歯のような八重歯が覗く彼の口内から、唾液にまみれた爪先が外気に触れる。ひやりと冷たい。俺が足を組み直すのを見計らって、奴は再び足の指の先から舌を這わす。背筋を駆け上がる快感に、俺は冷笑する。奴が時折その眼を細めて、俺の足を食べ物のごとく咀嚼するものだから、爪の生え際や肌の薄い指の間からは、血が溢れ出していた。


「美味いのか?」


此方の問掛けに答える事なく、奴は一度俺を黙って睨みつけると、何事も無かったかのように足首を捕える手に力を込める。愚かしいこの男なりの反抗なのだろう。奴が反抗的な態度を取るだけ、俺の加虐心は煽られて、この男の抵抗などまるで無意味なものになっているというのに。足の指から土踏まず、足首の関節へと這上がるざらついた生温い舌と、奴と俺の股座だけが正直者だ。言葉などは要らない。嘘を吐くのが苦手では無いが、中途半端な恋愛ごっこなど嫌いだ。それはコイツだろうと同じ筈。


「赤井」

「‥‥‥‥‥」

「二回も三回も貴様なんぞの名を呼ばせる気か」

「‥なんだ」


奴の赤い口から、ぼろりと俺の足先が溢れ落ちる。糸のように伸びる唾液を乱暴に手の甲で拭い、いかにも胡乱そうに、跪いたまま俺を見上げた。
俺はそんな奴の暗黒色の切断して短くなった癖のある髪を掻き分けて、男の耳のすぐ傍で囁く。



「愛していると言え」



奴はそう、喩えるならば狡猾な狼のごとき人間だが、とびきりの猫撫で声で。俺がそう言うと男は毛を逆立て威嚇する臆病な猫のよな尖った視線を此方へ向ける。俺の真意を窺うような目をして、ふんと鼻を鳴らしてから、するりと此方の膝裏を肩に抱えて、俺の座るソファーにのし上がった。顔の両脇には鍛えられた男の腕。猫のように鋭い爪はないが、もうこれで俺は動けない。


「そんな安い女ではないだろう、おまえは」

「‥言わないなら、やれねぇな」

「いらない」

「ほう?勃起させておいてよく言える」


肩に担がれた方とは逆の自由がきく足先で、のしかかる男の股間にあるものを意識させるよう、軽く踏み付ける。言わずとも知れているが、熱い。単純かつ下賤なこの男の悦ぶ事など、俺はとうに知りつくしている。女を殺した俺の命を狙っている事実やその性格とは裏腹に、これは俺に虐げられる、若しくは命令される事でも別段拒否していているわけではないようだった。
『愛している』など、甘いだけの言葉じゃあ、まだ安い。まだ足りない。俺にとっても、コイツにとっても。

顔の横にある奴の手首を鷲掴む。拒否する隙など与えない。寄りかかっていたソファーから上体を離し、唾液に濡れた男の唇に噛みついた。奴が呆けた様子で為されるがままに享受していたのも束の間。直ぐに口内には奴の舌が侵入し、起き上がった俺の体は再度ソファーに凭れ掛る。息も出来ない。強く吸われる唇や舌が、沁みるように痺れてきた頃、漸く奴は解放した。その上、気付いたらキスの合間に男は俺の足の間に移動してきていたらしい。全く身動きが取れない。奴は口許を歪め、いつもの意地悪い表情を浮かべた。



「こんなに濡らしてるおまえに言われたくはないな」

「不感症よりはマシだろう。貴様も雄として面目が立つなぁ?」

「もう喋るな、聞きたくもない」



奴の指摘した通り、臙脂色のビロードのソファーには、しとどに溢れ出た愛液が染みを作っている。俺がそれを確認するや否や、奴は無遠慮に膣を指で引っ掻き回す。粘着質な音がする。奴の指がある一点を掠める度に飛び出しそうになる嬌声を押し殺し、下唇を噛んだ。血が滲む。速さと激しさの増してゆく指の抽出と陰核への刺激に我慢が追い付かなくなっていくのを感じた時、俺は男の首回りに抱きついてやった。
まだ俺は、負けてはいない。


「っア、や、ッはぁ‥も‥うあァっ、あ‥ッ、」

「はっ、しゃべるな‥、っ、と言ったろう」

「‥ッく、ヤ‥っあア、も‥あ、ッア‥あ、かい‥っ」

「、っな、」


耳元で喘ぐ俺に少しの余裕を見せた男の後頭部に、ゴリッとピストルを押し当てる。護身用に、いつもソファーの隙間に隠しているものだ。
愛撫を繰り返していた奴の指が大人しくなる。男の黒い瞳が、1ミクロにも満たない恐怖と疑心に揺れた。その瞬間に、俺の口許は弧を描く。引き金にかけた人差し指へ神経を研ぎ澄まして、奴の前髪をかき上げた。こんな修羅場に大声を上げて暴れる程馬鹿ではない男は、今はただ俺の一挙一動を薄ら黙ったまま見つめている。熱は、褪めやらない。



「天国にイカせてやろうか。スリーカウントだ」

「‥っ、おまえ、」

「愛してると言え、そうしたら貴様の薄汚いそれを突っ込ませてやろう。言わないなら、きっと、あの憐れな女か―――若しくは俺のような天使に会える」



奴の露になった暗い瞳が、崩れかけそうなプライドに細められる。指の腹を奴の額から頬へ、頬から首筋へと滑らす。頸動脈の上を確かめるように、そうして奴を急かすように、俺は男の耳元で息を吐く。奴の頭に、銃口を擦りつけた。






「スリー」


「ツー」





「ワン」







(嗚呼、これだから堪らない)









 
| 21:24 | - | comments(0) | - |
チャットしました
 
今日……というか昨日。凄かったです。
彼さんと五時間耐久☆チャットしました。宿題は長こへと赤♀ジンとガウゼロです。ていうかラスト三十分くらいにひょいと会話に飛び込んできたボケボケ天然剣士×詐欺師魔族がリストに入れられるとは……京さんとってもびっくりしてさっきまでスレイヤーズサイトまわってました。作品としてのガウゼロはあんまなかったなぁ。ガウゼロの真骨頂は自分が相手と一線を違える存在であり、また生物の負の感情を糧とするからこそ相手との幸せが長くは望めないってことですよね……これであってますよね彼さん。もっとこの二人も掘り下げたかったなぁ。
赤♀ジンは肉食系殺伐CPで赤井はドMって話だった気が。緩やかに絆されてゆく女への本能的に募る庇護欲と譲れない組織への忠誠の狭間で揺れる男VS相手が持つ己への憎悪も劣情も最後に残る一欠片の愛にも凛然としながら嘲る強かで麗しい悪女の方程式美味しいです……。どう転んでもバッドエンドしか来ないからこそ束の間の余興たる快楽に溺れる二人は素晴らしい。
余談ですが♀ジンはスレンダー系微乳を希望します。胸よりも脚線美で勝負。
長こへはもう、萌え尽きて纏められないんで今度文章におこします。

あー、脳内でガウゼロがどうしてもにょたる……にょたが美味しいのはわかるんですが♀ゼロスってある意味クロスやジン以上な悪女で恐ろしい。考えものですね。
 
| 00:07 | - | comments(0) | - |
誰も知らない
実に四ヵ月ぶりにおひさしぶりです……すいません。欠片も日記として機能してませんね。最近は忍の卵にうつつをぬかしてました。六ろと鉢屋が欲しい。

テストがオワタ\(^o^)/したのでリハビリがてら頑張ってみました。凄い忘れてる。前に書いたしろ師の続きです。


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ex,sadden me




息を切らして、足を引きずりながら、必死に逃げる夢を見る。誰もいない真っ暗闇を、何も頼るものも無しに、駆け抜けている。背中に迫る生暖かい恐怖心のせいで、一度も振り返った事はない。俺は、俺を追い詰めるものの正体を知らない。ただひたすら逃げるだけ。次第に近付いてくる足音を振り切るくらいに、額を流れ落ちる汗にも構わず、前へ。捕われてしまったらどうなるか分からない。だから逃げる。この悪夢から解放されるまで、俺はいつも逃げ惑うのだ。




「‥っ、はぁ‥‥は、‥‥‥しろ‥‥?」


「怖い夢?うなされてたよ。」




再び俺の意識が吸い寄せられるように覚醒へと導かれたとき、奴の華奢な腕と、アメジストの瞳が視界に飛び込んだ。淡い橙色の灯りはオフホワイトのシーツを万遍なく照らし、ぴったりと閉められたグレーのカーテンから今が夜なのだということに気付いた。再び、朝何も言わずに飛び出したアイツの待つマンションに帰るのはあまり気が進まないが、何も関係の無い彼をこれ以上巻き込んで迷惑を掛ける訳にもいかない。



「‥‥帰る」



引き留めてくれるのではないかという僅かな期待を込めて放った呟きに、彼は何も言わずに頷くだけで、「じゃあね」と優しい声色でそれを促す。背中に回されていた腕が離れ、また自分が一人になり支えるものが無くなったと感じた時、俺は初めて夢の中で自分を追い詰めるものの正体を垣間見た気がした。
コイツは俺の恋人でもない。ただの幼い頃から知っている歳の離れた『友人』でしかなくて、俺も彼を選びはしなかったし、彼も俺を選びはしなかった。俺が選んだのは今頃俺の帰りを待っているであろう熊みたいな大男であり、この寂しさを、不安を、埋め合わせるのはコイツではない。



「あなたが寝てしまった後だけど、ソカロが俺に電話をくれたんだ」



起き上がろうとする俺を制するように手首を掴み、紫色の目をゆっくりと細めながら、彼が言う。俺は一瞬戸惑った。例え俺の行き先が分かっているにしろ、彼に直接連絡をするなんて初めての事だ。
泳いだ視線を彼に戻すと、彼は別段機嫌を損ねてしまったような表情も見せておらず、嘘の無い瞳で俺をじっと見て、俺の反応を窺っている。



「‥そうか‥‥気まずくさせた、な。」

「そんなことないさ、十年来の付き合いなのに」

「だが、しろ」

「‥‥ねえ、ねぇクロス。ひとつ俺に約束してくれない?」

「約束?」



俺が驚き思わずその単語を反復すると、彼は白い掌を俺の頬に添え、口許に微笑を浮かべる。俺は彼の初めて口にする『約束』という言葉に瞬きを繰り返すが、彼はさして気にも留めていないようだ。細い指先が遊ぶように耳や項を撫でるが、彼の真意は諮り知れない。



「もう俺の前で泣いたりしないと、約束して。」

「‥‥‥何故」

「俺はね、あなたにも、ソカロにも幸せになって欲しいんだ。それなのに時々、あなたはこうして俺の所へやって来ては、涙を見せて帰って行く。」

「それは‥」



感情的になり声を詰まらせる俺の唇に、項から彼の指が素早く移動する。俺がそれ以上先を話すのは許さない、といったように。柔らかい灯りにアメジストがきらりと光り、今まで一度も見せた事など無い悲しみを湛えている。
俺は言葉を呑んだ。一体何が、関係のない彼までをも苦しめているのか。俺には見当もつかなかった。いつも俺とソカロに距離を置いて、馬鹿らしい喧嘩に柔らかな笑いを溢し、慰めてくれる。そんな普段の彼の様子とはかけ離れた雰囲気を、今は纏っている。



「何故、おまえがそんな顔をする‥?」

「あなたが幸せになってくれなきゃ、俺も悲しいんだよ、クロス。」

「‥だが、」

「俺はね、あなたの事がこんなに好きなのに、あなたの幸せを願う事しか出来ないんだ」



彼は、笑って息も吐かずに続けると、漸く手首を解放し起き上がる。彼の表情はいつものような落ち着きを取り戻しており、「早くソカロの所へ帰ってあげて」と続けた。何と返せば良いのか分からずに困惑する自分をよそに、寝室のドアの前で彼は一度立ち止まり、俺に背を向けたまま小さな声でごめんねと呟く。

俺は彼の背中へ駆け寄った。駆け寄り彼の背中を抱き締めてしまえば、俺はまた彼を悲しませる事になるのだと、分かっていた。分かっていたから、伸ばしかけた腕を黙って下ろして、深い呼吸を繰り返す。彼は一寸も動こうとはしない。



「しろ、おまえに約束しよう」



彼の白い手を取る。随分と冷たい手だ。熱を持ち近寄るもの全てを遠ざけて生きてきた、そんな、彼の手だ。

(彼が寄り添う居場所など、何処にもなくなってしまうのは寂しい。)

彼は黙っている。絡み付く俺の手を振り払うこともしないで、沈黙を貫く。




「寂しくないふりばかり、しなくていい」




 『誰も知らない』
 お前の秘めた悲しみなど




(お前の押し殺した寂しさの分だけ、俺の幸せは悲しみに変わる)




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